2012年より約10年間暮らしたカンボジアでの海外生活に幕を閉じ、2022年12月末に愛猫大五郎くんを連れて日本へ帰ってきました。
猫を連れての日本入国にあたって、海外からペットを連れて帰るために必要な輸入検疫手続きを、前編と後編の2回にわけてまとめていきます。
実際に行った順に、なるべくわかりやすく、なるべく詳細に記載したので少し長くなりそうですが、海外からペットと一緒に帰国すること検討している方はぜひ参考にしてください。
指定地域以外からペットを連れて帰る場合、順調に準備をしても最低7ヶ月以上の時間がかかるので、ペットとの帰国を考えている方は早め早めに準備を進めてくださいね!
輸入検疫手続きの流れ
指定地域以外から日本に輸入される犬や猫は、狂犬病予防法などに基づく検疫を受けなければいけません。
指定地域とは?
動物検疫所のHPによると、指定地域とは農林水産大臣が指定している狂犬病の清浄国・地域で、アイスランド・オーストラリア・ニュージーランド・フィジー諸島・ハワイ・グアムの6地域が指定されています。(2013年7月現在)
つまり、上記6地域以外は指定地域以外となり、輸入にあたり下記のような検疫手続きが必須です。
- マイクロチップの埋め込み
- 狂犬病予防接種(1回目)
- 狂犬病予防接種(2回目)
- 狂犬病抗体検査(血清検査)
- 輸入前待機(抗体検査の採血日より180日間以上)
- 事前届出(到着予定日の40日前までに)
- 輸出前検査と輸出国証明書の取得
- 輸入検査(日本到着後)
手順⑥〜⑧は、後編にてまとめています。
関連:海外から犬猫などのペットを日本に連れて帰るための輸入検疫手続きについて|前編
ステップ1|マイクロチップの埋め込み
まず、ペットの個体を識別するためのマイクロチップを皮下に埋め込みます。
マイクロチップは動物病院で埋め込むことができますよ。
カンボジアの動物病院では、推奨されるISO規格のマイクロチップの埋め込みが20ドルで処置可能でした。
ISO規格のマイクロチップとは、番号が数字のみ15桁でISO11784及び11785のものです!
埋め込んだマイクロチップは専用の読み取り機(マイクロチップリーダー)で確実に読み取れることが必須なので、動物病院での処置や検査の都度確認してもらうと安心です。
ステップ2|狂犬病の予防接種(1回目)
マイクロチップ埋め込み後、狂犬病の予防接種を2回以上行います。
1回目の予防接種は、生後91日齢以降かつマイクロチップ埋め込みの後でなければなりません。(同日でも可能)
また、有効な予防液は国際獣疫事務局(OIE)の基準を満たした不活化ワクチンまたは組み換えワクチンでなければならず、生ワクチンは認められません。
有効な狂犬病予防液の種類
- 不活化ワクチン(inactivated/killed virus vaccine)
- 組み換えワクチン(recombinant vaccine)
狂犬病ワクチンの種類について心配な場合は、獣医師に日本への輸入準備であると伝えた上でワクチンの製造会社と名称を聞き、接種前に動物検疫所に確認するとスムーズだと思います。
カンボジアでは狂犬病ワクチンの注射は、1本8ドルで処置可能でした。
シェムリアップにもいくつか動物病院がありますが、友人の紹介で知ったSiemReapVaterinaryCareには、親切なニュージーランド人の女性獣医さんがいるので安心して診てもらえました。
ステップ3|狂犬病の予防接種(2回目)
1回目の狂犬病予防接種から30日以上の間隔をあけて、2回目の狂犬病予防接種を行います。
なお、2回目の予防接種は1回目のワクチン予防液の有効免疫期間内に行わなければなりません。
有効免疫期間とは、予防液の使用期限ではなく犬や猫の体内で免疫が維持する期間のことで、製品によって違うため、必ず獣医師に確認しましょう!
2回目接種後であっても日本到着日までに有効免疫期間が1日でも切れてしまう場合は、有効免疫期間内に追加接種が必要です。
狂犬病ワクチン接種スケジュール|大五郎の場合
1回目 2021年6月16日(有効免疫期間1年)|DEFENSOR3/ZOETIS
⇨【30日以上の間隔をあけて接種】
2回目 2021年7月21日(有効免疫期間1年)|DEFENSOR3/ZOETIS
⇨【有効免疫期間内に帰国または追加接種】
3回目 2022年7月14日(有効免疫期間1年)|Rabisin/MERIAL
帰国 2022年12月25日
大五郎の場合は不測の事態に備えて、本格的な帰国日を考えるよりも随分前から準備を進めていました。
実際に帰国日を決めたのは2022年になってからで、2022年12月末に日本到着の予定で動いていたので、2回目の狂犬病ワクチンの有効免疫期間が切れてしまう2022年7月21日よりも前に、3回目の追加接種を行いました。
有効免疫期間を過ぎてから接種したものは追加接種とは認められず、1回目の狂犬病注射からやり直すことになります。
日本到着日までに絶対に有効免疫期間が切れないよう、ワクチン接種のスケジュールはしっかり確認しておきましょう!
ステップ4|狂犬病抗体検査(血清検査)
予防注射によって狂犬病に対する免疫を獲得できたことを確かめるため、2回目の狂犬病予防ワクチン接種後、動物病院で採血をし、抗体価を測定するための狂犬病抗体検査を受けます。
なお、狂犬病の抗体価の測定は、農林水産大臣が指定する検査施設で行わなければなりません。
海外で狂犬病抗体検査を受ける方法
海外に住んでいる場合でも、近隣に指定検査施設があれば在住国で抗体価の測定検査を受けることができます。
しかし、カンボジアには指定検査施設がないため、大五郎の場合は血清と獣医師の署名が入った検査申請書を日本の検査機関に送って検査を受ける必要がありました。
血液を送付する場合は、採血前に検査施設に連絡を取り、申請書の書き方や容器の表示方法、血清の保存や輸送に関するルールを確認した上で行い、採血の際は必ずマイクロチップが読み取れることを確認します。
採血は2回目の狂犬病予防接種と同一日でも可能ですが、獣医師と相談したところによると、抗体価を十分に測定できる狂犬病予防接種の1週間後くらいが適期とのことで、大五郎の場合は時間に余裕があったため、1週間後に採血をしました。(採血料金20ドル)
海外からの送付方法はEMSやDHLなどが一般的ですが、わたしの場合はタイミングよく日本に帰国する友人がいたため、ハンドキャリーで日本に持ち込んでもらい、クール宅急便で指定の検査施設に送ってもらいました。
猫の血清の場合は不要ですが、犬の血清をハンドキャリーで輸入する際は動物検疫が必要ですので、予め確認しておきましょう!
日本の指定検査施設
日本国内にある農林水産大臣指定の狂犬病検査施設の詳細は下記の通りです。
指定施設名 | 一般財団法人 生物科学安全研究所 Research Institute for Animal Science in Biochemistry & Toxicology |
住所 | 〒252-0132 神奈川県相模原市緑区橋本台3丁目7番11号 3-7-11 Hashimotodai, Midori-ku, Sagamihara, Kanagawa, 252-0132, Japan |
電話番号 | +81 (0)42 762-2819 |
FAX | +81 (0)42 762-7979 |
メール | rabies@riasbt.or.jp |
一般財団法人 生物科学安全研究所では、海外からの血清送付による検査も行ってくれます。
ただし、海外から犬の血清を送る場合は検疫が必要になりますので、事前に確認しておきましょう!(猫は不要です)
海外から血清を送る際の注意点
- 血清は最低1mLを冷蔵または冷凍で送付すること
- 薬剤の入っていない容器に入れ、ラベルにはマイクロチップの番号を記載すること
- 規定に準拠した三重包装(一次容器、二次容器、輸送用外装)で送付すること
冷蔵・冷凍輸送が難しいときは、血清を冷凍庫で凍結し冷凍したアイスパックと共に梱包すれば、常温での送付も可能とのことです。
検査料金
検査料金は振り込みでの先払いとなり、1検体あたり13000円です。
クレジットカードや現金での支払いには対応しておらず、事前に振り込んだことがわかる振り込み証明のコピーを検体と共に送付します。
抗体価の基準値および抗体検査の有効期間
検査結果は、検体到着日より約2週間くらいでわかります。
日本入国に必要な狂犬病抗体価(免疫抗体の量)は、基準値0.5 IU/mL 以上でなければなりませんが、大五郎の場合はバッチリ10.3 IU/mL の抗体価があったので、輸入に必要な証明書を無事に受け取ることができました。
申請書及び証明書は基本的には依頼主(飼い主)の住所に返送されますが、別途指定の住所がある場合は相談可能です。
わたしが検査を受けた2021年8月頃は、日本とカンボジアのEMSが一時的に止まっていたため、証明書をカンボジアに返送してもらうことができず、日本の実家に送って保管しておき、郵便が動いた時点でカンボジアに送りました。
なお、狂犬病抗体検査証明書の有効期間は採血日より2年以内となります。
証明書の原本は日本に入国する際に必要なので、絶対に紛失しないよう保管しておきましょう!
ステップ5|輸入前待機(180日間以上)
狂犬病抗体検査が終わり無事に証明書を取得できたら、採血日を0日目として180日間以上の待機をします。
待機期間をおく理由は、予防注射により免疫を獲得する以前に狂犬病に感染していないことを確認するためで、狂犬病の潜伏期間に相当する180日間を待機期間としているようです。
ここまでのステップがすべて順調に進んでも、採血日から180日間は待機しなければならず、この期間は帰国することができません。
このように本当に準備期間に時間を要するため、ペットを連れて帰国する予定がある場合は1日でも早めに準備しておきましょう!
また、待機期間中でも航空会社の情報収集や届出書類の作成などの帰国準備は進めることができます。
帰国日程が大まかにでも決まっている場合は、早めに管轄の動物検疫所などに問い合わせをしてみると今後の流れや細かい疑問なども解決できて安心です。
わたしは到着予定の中部国際空港を管轄する中部空港支所に電話やメールで相談しましたが、とても親切に対応してくれましたよ!
前編のまとめ|まずは狂犬病の抗体検査までのステップを準備しておこう!
長くなりましたが、ペットの輸入検疫手続きの前編として、マイクロチップの埋め込みや狂犬病のワクチン接種、抗体検査など、事前に行うべき準備についてまとめました。
ここまでの内容で、日本にペットを連れて帰る際の条件を整理すると、
- マイクロチップを装着していること
- 狂犬病予防ワクチンを2回以上接種し、有効免疫期間が1日も切れていないこと
- 指定の検査機関で受けた狂犬病抗体検査の結果、抗体価が基準値0.5IU/mL以上であること
- 狂犬病抗体検査の採血日を0日として、180日以上待機をしていること
以上、4つの条件がすべて揃っていることが日本に入国するための最初のステップとなり、待機期間の180日を過ぎれば、検査証明書の有効期間2年以内に帰国をすることが可能です。
ここまでの準備が終われば、残りはあと半分!
残りのステップとしては、帰国日を決めて、航空会社を手配し、輸出や輸入に必要な最終書類を揃えるなど、より具体的な準備が必要になります。
まだまだ少し大変なこともあるかもしれませんが、愛犬・愛猫との帰国をスムーズにするために、みなさん頑張りましょう!
心配性でおっちょこちょいなわたしは、万が一書類に不備があってはいけないと、最後の最後までハラハラドキドキしていましたが、無事に大五郎と一緒に帰国することができ、2023年4月現在、わたしも猫も日本で楽しく生活しています。
続きはこちらよりご覧ください。
関連:海外から犬猫などのペットを日本に連れて帰るための輸入検疫手続きについて|後編
後編では、実際に日本に帰国するまでの過程をレポートしております。